桃の花

【ご注意】
以下の成分が含まれます。
苦手な方は閲覧をおやめください。

○男キャラ視点の🎾夢小説
○女キャラがガッツリ出ます
○女キャラはオリキャラです
○設定捏造
○年齢操作
○真田→←女キャラ
○お見合い話
○3強が酒飲んでる

上記が大丈夫な方のみこの先へどうぞ






 結婚などする気のない俺を押し切り、両親が設けた見合いの席に現れたのは幼少の頃、テニススクールにて一時の間轡を並べた女性だった。と言っても、俺がそのことに気が付いたのは顔合わせの際に同席した母に言われてからであったが。

 己を擁護するわけではないが、今目の前にいる女性と、記憶の中の少女はあまりにも違った。記憶の少女は黒い髪を短く切り揃え、目に強い意志を宿し、男児に一歩も引けを取らない竹を割ったような性格の快活な少女だった。よく男児と勘違いされていた姿を覚えている。対して目の前の女性は、腰まであろうかという長く艶やかな黒髪を柔らかく結い、口元に穏やかな微笑を湛えた「嫋やか」という単語に人の形を与えたかのような美女だ。同じ人物であると一目で気付くのは容易なことではないだろう。「後は若い二人だけで」などと決まりの言葉を残し、互いの親が退出してからも、「開いた口が塞がらない」を通り越し、俺はすぐに口を開けずにいた。
すると女性は目を伏せて口元を隠してはふふ、と鈴を転がすような笑い声を上げた。
「見過ぎですよ、弦一郎。」

 「そこまで見ていただろうか。失礼した。しかし…随分と雰囲気が変わったな。見違えたぞ。」
「ふふ、そのようですね。御母様に言われるまで私が誰なのか分からなかったようですし。…忘れられてしまったのかと少し悲しかったのですよ?」
「それは…すまなかった。しかし、俺でなくとも、あの″桃太郎″とはそうすぐには気付くまい。」
「もう…その呼び方はおやめくださいな。私がその呼び名を嫌っていること、よくご存知でしょう?」
「失敬。それくらい見違えたという物の例えだ。」
「私、そんなに変わりましたか?」
「うむ。母上からお前だと言われなければ気付かなかっただろう。当時のお前は覇気に溢れた快活な人物だった。見目も、纏う雰囲気も今のお前のそれとは違う。まるで別人のようだ。」
「…なんだか、昔の方が良かったかのような言い方ですね?」
「そうは言っていない。人の見目や雰囲気は、その人物がどの様に時を重ねたかを映し出すものだ。過去の方が良いなど、そうあることではないだろう。当然、あまりに怠惰に過ごしたのであれば話は別だが、今のお前を見てその様に過ごしたとは微塵も思わん。……む?」
言い終えて気付けば、彼女は目元を細め、頬を綻ばせていた。

 「…何かおかしなことを言っただろうか?」
「いいえ。貴方は変わらないと思っただけですよ。」
「変わらない…?そうだろうか。」
「ええ。昔も同じ様に私の見目について恥じる事はないと励ましてくださったのをよく覚えています。邪念がなく、研ぎ澄まされて真っ直ぐなまま。放たれた矢の様だと言われていたのを思い出しますね。」
「その様に言われていたとは初耳だな。しかし、矢ではいずれ落ちてしまうではないか。」
「物の例えです。それに、落ちる前に、弦一郎なら何かを射止めるでしょう。要らぬ心配ですよ。」
「ふむ…それもそうか。」


 「ところで、弦一郎?」
「なんだ?」
「先程から私のこと″お前″としか読んでくださらないですけれど、名前では読んでくださらないのですか?」
「そうだったか。これは失礼したな、古舞。」
「…。」
暫しの昔話の後に切り出した彼女にそう呼びかけると眉を下げて心なしか不満げな表情を浮かべられる。
「なんだ、その顔は。」
「そんな余所余所しい呼ばれ方をされるだなんて思っていませんでしたので。」
「余所余所しい…だろうか?」
「余所余所しいではありませんか。寧ろ上の名で呼ばれた覚えがありませんもの。」
「ふむ…言われてみれば苗字で呼んだことはなかったかも知れんが。」
「かつての様に呼んでくださいな。」
「しかし、深い仲でもない女性の下の名をそう気安く呼ぶものではないだろう。」
「私がそう呼ばれたいのです。」
零した彼女の表情はどこか見覚えのあるいじらしげで、無意識に過去の姿と重ね合わせる。そしてそれが重なった途端に何か胸にむず痒いものがこみ上げた。
「いや、しかし…」
「しかし?」
俺は何に心を乱しているのだろうか。言の葉の続きを求める目線に対し投げてやる次の言が出てこない。
「私の名を呼ぶのは嫌、ですか?」
「そうではない!そうではないのだ…ただ、」
不安を帯びた声色の問いについ大きな声を出すもやはり続きは浮かんでこない。あぁ、記憶の隅にしまっていたが、かつても俺はこうだった。この人物にこうして見つめられ、何かを問われる度にハッキリと返事をしてやれた試しがなかった。思い起こされる過去の記憶を辿るも、今はそれに浸っている場合ではない。こうしている間もその目は俺を射抜き続けた。

 「お前は、その、嫌がっただろう。名を呼ばれるのを。」
「それは″桃太郎″のことでしょう?たしかに名をもじったそのあだ名で呼ばれるのはとても嫌でした。おかげで自身の名を呪ったこともあります。しかし、貴方はその呪いを解いてくれたではありませんか。」
あぁ、忘れもしない。俺が初めて他人に送った言葉。女子の喜ばせ方など知らぬ俺が選んだ言葉。
「花言葉、か…。」


 「それで、結局付き合う事にしたんだ?」
俺の見合い話を一頻り聞いた幸村は酒を煽りながらクスリと笑う。
「見合い前日に″見合いなどくだらん″と言っていた男は一体誰だったか。」
またその隣では蓮二が銀杏の殻を砕きながら口元を緩めた。
「笑ってくれるな。俺とて交際に発展するなどとは夢にも思っていなかったのだ。」
3人で使用するにはややゆとりのある料亭の個室にて、二人に詳しく話したのは失策だったかと話し終えてから思うも後の祭り。幸村が愉快そうに口を開く。
「いやぁ、それにしても初恋を叶えてそのまま結婚だなんて真田らしいね。」
「あぁ、一般的に初恋は実らないと言われている。事実、幼少の頃に恋愛感情を抱いた相手と成人してから結ばれるというのは中々に稀な事だろう。」
「待て。桃花を初恋の相手とは一言も言っていない。」
「言ってはいないけど、違わないだろう?少し話をするだけのことで動揺する真田を見られたのは後にも先にもあの頃だけだと思うけれど。」
「ほう、今の弦一郎からは想像も付かない姿だ。興味深いな。」
「思い違いだと言うに…。」
「じゃあなんであの頃の彼女を思い出したんだい?真田は女性を一人一人記憶しておけるタイプではないだろ。」
「失敬な…。」
「否定はさせないぞ、弦一郎。中学校の頃お前は何人の女生徒を泣かせたことか。」
「ホワイトデーの後の話は傑作だったなぁ。」
「何だかんだとバレンタインにチョコを渡され、お返しをする目的で女生徒の顔とクラスを覚え、無事にお返しを渡し終えた後にはそれらの情報は綺麗に忘れ去られていたと言う話だな。」
「そうそう。顔を覚えてもらえたと思った女の子が応援か何かでタオルを渡しに来てくれたのに、真田ときたらその子に″どこかで会ったことがあっただろうか″って。その子たしかその場で泣いちゃったんじゃなかったかな。」
「そ、そんなことあっただろうか…?」
「ほら、覚えてない。真田にとっては女の子の存在って基本的にはそれくらいのものだろう?なのに古舞さんの事はよく覚えてたんだ。それだけで少なからずとも特別な存在だったんだと思うけど。」
「それは…そうかもしれないが……だからといって初恋という事には…」
「なら、他の誰かに対して恋愛感情を持った事は?」
「あるわけなかろう!そのような事にうつつを抜かしている暇など…」
「それならやっぱり古舞さんが初恋じゃないか。」
「何故そうなる⁈」
「現に真田は古舞さんと結婚を前提に交際を始めたわけだろう?まさか、恋愛感情のない相手と″結婚を前提に″付き合うわけないよね。」
「なっ………」
幸村は柔和でいて強固な、逃げ場を与えるつもりのない笑みを向けた。堪らず俺は席を立つ。
「弦一郎、」
「手洗いだ!」

 「ふふ、少し意地悪だったかな。」
「楽しそうな顔で何を言っているのやら。しかし、古舞さん、と言ったか。その女性も変わっているな。″桃太郎″で自分の名を呪っておきながら、″天下無敵″というまじないで弦一郎に好意を抱いたというのだから。」
「だろう?あの頃はまだ俺も4つだったけれど、あぁいう2人を″お似合い″って言うんだろうなって遠目から思ったものだ。それにしても、まさか真田に先を越されちゃうとは思ってなかったな。」
「そうだろうか。俺個人としては一番長く独り身で居そうなのは精市だと思っているが。」
「酷い事言うなぁ。否定はできないのが悲しいところだけれど。」
「″優しそうな見目″と言うのも考えものだな。」
「見た目で判断する子が悪い、とは言わないけれどね。″思ってたより冷たい″だなんて言われたって、相手の思い描く俺なんて俺の知る限りじゃないだろう。」
「違いない。…あぁ、弦一郎。戻ったか…いや、ドアの前で待機していた、の方が正しいだろうか。」
「お前たちがいつまで経っても色恋の話などしているからだ!全く、たるんどる!」
「それを真田に言われてもなぁ。」
「全くだ。」


科・属名:バラ科モモ属
和名:桃(モモ)
英名: Peach blossom
原産地:中国
色:ピンク、赤、白
開花時期:3月~4月
花言葉:
「天下無敵」「気立ての良さ」
「私はあなたのとりこ」

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